Naoko's Styling Room 大草直子が 今、会いたい人

vol.6 林信朗さん

スタイリングディレクターの大草直子さんが今こそ会いたいと願うゲストを招き、ジェンテ ディ マーレのアイテムとともに装いについての熱いトークを繰り広げる連載も、いよいよ最終回。有終の美を飾るホリデーシーズン直前のスペシャル企画として、服飾評論家の林信朗さんが登場し、大切な人への贈りもの選びや自分のためのご褒美ギフトについて、大草さんととことん語り合ってくださいました。

Today's Guest...林信朗さん
数々の男性誌の編集長を歴任し、現在は服飾評論家として執筆やイベントへの登壇を行う。ダンディズムとメンズファッションをすみずみまで知りつくし、時代とともに変遷していくスタイルの本質を見極め伝える姿に、憧れを抱く業界内のファンも多数。

Host...大草直子
ファッション誌編集者から活動の幅を拡げ、スタイリングディレクターへ。イベント出演やブランドとのコラボレーションを多数手がける。WEBメディア「AMARC(amarclife.com)」を主宰。『AMARC magazine』の編集長兼発行人。
インスタグラム:@naokookusa

贈られる側も、
贈る側も幸せにする
ギフト選びの極意を伝授

大草さん(以下大草):ジェンテ ディ マーレのアイテムをまとい、ゲストの方と着こなしについて楽しくお話ししてきた、通称「直子の部屋」連載。いよいよ最終回となる本日はちょっと趣向を変え、年末にかけて数が増えるギフトセレクトに特化したトークができたらと考えています。お越しくださったのは、メンズファッションに精通する林信朗さん。このたびはありがとうございます!

林さん(以下林):こちらこそ、呼んでいただいてうれしいです。どうぞよろしくお願いします。

大草:林さんは編集者としての大先輩。私が新卒で出版社に入社した当時から著名誌の編集長でいらっしゃり、ずっと憧れつづけていました。ご自身の着こなしがおしゃれなだけでなく、生き方までもがすごく“粋”。会社を離れたあとも新聞の紙面でのファッション企画のお仕事をご依頼いただくなど、エキサイティングな経験をさせていただきました。

:そう言ってもらえるとうれしいね。僕も大草さんのことは入社当時から、若くて素敵で元気のいい編集者として、雑誌の成長の原動力となっているなと、活躍ぶりを見ていましたよ。

大草:なんて光栄なお言葉! 私のほうからも、なにかといえば林さんとご一緒させていただきたくて、「AMARC magazine」でファッションについてのコラムを書いていただいたり、イベントに登壇していただいたりしていますよね。一度、トークショーでオーディエンスの皆さんに向かい「今僕が着ている服、全部レディスなの!」とおっしゃったときは、とても素敵でした。固定概念にとらわれずにおしゃれを追求される姿が、本当にかっこよくて。

:そんなこともありましたね! スタイルって、思いこみや垣根を打ち破っていくところにおもしろみがあると、僕は考えていて。あるとき女性もののLサイズが自分に合うことに気づいてからは、メンズもレディスも関係なく着ています。例えばパンツ1枚とっても、メンズでは黒か白かグレーくらいしか色展開がないことがしばしば。でもレディスなら、きれいなイエローやグリーンの展開がたくさんあるから、着こなしの幅がぐんと広がるんだよね。六十代後半にして殻を打ち破った感じがして、最近も自由にショッピングを楽しんでいます。

大草:今お召しいただいているのは、「CIRCOLO 1901(チルコロ 1901)」のジャケットですね。ジャケットのマットな質感に対し、インナーの白シャツはテロッとしたテクスチャーで、素材のコントラストが素敵です。

:そうだね、やはりジャケットなどのテーラードアイテムは、イタリアブランドのものがしっくりくる。“構築的”というのかな。とくにメンズの服づくりにおいては、肉体に対してどういうふうにフィットさせていくべきなのかをよくわかっているなと、着てみて思うね。非常に着心地がよくて、このまま寝ちゃってもよさそうなくらい。

大草:そこにダメージの入ったジーンズやスカーフを合わせるところが、またすごく林さんらしくて、こなれた印象に。

:それを叶えるのが、このジャケットの素材感の優秀なところ。プライベートとパブリックを行き来できる、カチッとしたムードと柔らかさの両方がある。昼間は会社で仕事して、夕方からはそのまま奥さんや彼女と遊びに行くことだってできそうな。

林さんがギフトに選んだのは……

Item Credit
タートルネックセーター〈 FILIPPO DE LAURENTIIS 〉¥49,500
※店頭のみの展開となります

クルーネックセーター〈 FILIPPO DE LAURENTIIS 〉¥34,100
※店頭のみの展開となります

大草:ダンディな遊び心が、スタイリングにちりばめられていますね! さて林さん、今回はギフト選びについてもお話しさせていただきたくて。私と林さんでそれぞれ、自分へのご褒美と、どなたか同性への贈りものとして選びたいアイテムをジェンテ ディ マーレのラインナップの中から披露できたらと思うのですが、いかがですか?

:はい。僕が選んだのは、「FILIPPO DE LAURENTIIS(フィリッポ デ ローレンティス)」のニットです。自分用にはグリーンのタートルネック、ギフト用には赤の中でもどんな人にも着てもらいやすいトーンの、赤いクルーネックのものがいいかな。お世話になった大学の先生なんかに渡したいね。

大草:どちらもきれいな色合いと、上質な素材感が特徴ですね。

:まさしくその通りで、肌触りや着心地がすばらしい。男性はファッションアイテムというと、つい形やブランドの伝統に関心が行きがち。でもこれからの時代、優しく肌触りがよいというのは、メンズファッションにも大事なことだと思うな。自分用に選んだグリーンのタートルネックは“後染め”の手法をとってあって、縫い目のところにちょっと変わった表情がある。近寄らなければわからない味のある風合いに、遊びが効いていていいなと。

大草:シンプルに見えてこだわりが光る、まさに林さんらしい“粋”な装いが叶いそう!

:ギフトとして選ぶアイテムは、もちろん素材のよいものを差しあげたいし、何か選んだ理由となる“メインコピー”が欲しいところです。その点、こちらの赤いニットは、日本人の肌の色にとても合うカラー。ルビー色って、明るく幸せな時間の色だと僕は思うんだよね。温かみがあって満たされた印象というか。そういう僕なりのメッセージを込めて、相手に贈りたいなと思うわけですよ。

大草:“ハッピーな時間をお贈りする”って、相手のことを本当に大切に考えているからこそ思い至ること。ギフトには、メッセージ性を持たせたいですよね。

:そう! プレゼントって、人を大切にする行為のひとつだと僕は考えているんです。ギフト選びの過程では“人間生活の中でとても大切でおもしろくて、価値のあることを実践しているんだ”という認識が大事。だからできれば、時間も想いも、予算もかけて選べたらいいね。大草さんはどう?

大草:私も、普段から人に何かを差しあげることが大好きで。プレゼントにリボンをかける行為は、“このご縁を大切にしたいです”という意思表示だと思っているんです。相手の喜ぶ顔を見るのが好きだから、基本的には手書きの手紙をつけるのがマイルール。ともに働くスタッフの誕生日会はささやかでも必ず開いて、誕生日プレゼントを渡すようにしています。ギフトを贈ることが、コミュニケーションの形のひとつになっているんですよね。

:いいね。僕も娘と一緒に買いものに行って、いろいろ買ってあげるのがコミュニケーションツールになっているな。途中で、自分の欲しいものを見つけたりもするけどね(笑)。

大草:レディスアイテムも着こなしの選択肢に入れると、それができてしまいますよね! ちなみに今私が着ている「チルコロ 1901」のセットアップも、ジェンダーレスに着ていただける雰囲気があると思うのですが。

:そうそう、大草さんのパンツを見て、僕も穿いてみたいなって思ってた! 色の感じがとてもいい。

大草:ゴールドがかったブラウンオリーブカラーが絶妙ですよね。あらゆる方向にストレッチの効いたコーデュロイは、まるで着ていないと錯覚してしまうような快適さが。きちんとした印象を漂わせながらも楽、というのは、コロナ禍を経てひとつのドレスコードとして確立した気がします。ラペルが細くて長いのも、女性が着るとシャープな印象に。インナーには、強さのある黒でなく、カジュアルに映る白でもない、ネイビーを合わせてみました。

:ゴールドとシルバーをミックスしたアクセサリーの色が、ネイビーにスタイリッシュに映えていますね。

大草さんがギフトに選んだのは……

Item Credit
クラッチ バッグ〈 THEMOIRe〉¥63,800
※店頭のみの展開となります

オー・ド・パルファン 50ml〈CARTHUSIA〉¥15,400

大草:ありがとうございます! そして、私は自分へのギフトに「THEMOIRè(テモワール)」のヴィーガンレザーバッグ、同性への贈りものには「CARTHUSIA(カルトゥージア)」のフレグランスを選びました。

:そのバッグ、ヴィーガンレザーなの? しっかりしていて上質なつくりだし、きれいな色だね。一見して普通のレザーと変わらない感じ。

大草:そうなんです。白と黒、そして暖色も寒色も入っているので、お着物などを含め、どんな服にも合いますよね。コロンとした形でクラッチにはもちろん、ショルダーバッグにもクロスボディバッグにもなる優れもの。まさしく今の林さんのコメントのように、「リアルレザーじゃないの?」というところから、カンバセーションピースにもなりそうです。

:うん、昨今はそういう新世代の素材に対して、男女ともに興味のある人が多いと思うよ。そして、誰かへの贈りものとしては香水を選んだわけだね。

大草:はい! 香り選びって、自分の好きなテイストを追求していくと選択肢が狭くなりがち。このような機会に人からプロファイリングしてもらい「これも似合うよ」って渡してもらえると、すごくうれしいと思うんです。特にこちらの「フィオーリディカプリ」はカプリ島に自生するカーネーションやスズランをベースにつくられたらしく、すごく興味をそそるなあと。ルームフレグランスとしても使えるそうで、気軽に楽しんでもらえるのではないかと思います。

:「カルトゥージア」は、香水もだけどキャンドルやディフューザー、シェービングオイルなども充実していて、ちょっとしたギフトにいいものがたくさん見つかりそう。

大草:それぞれのアイテムに、贈りたい人の顔が浮かんでくるようです。林さん、今日はありがとうございました!

Gente di Mare 銀座店

東京都中央区銀座6-10-1
ギンザシックス4階
TEL:03-6264-6850
※メンズ・レディースアイテムが両方揃うショップ。

Gente di Mare 丸の内店

東京都中央区丸の内3丁目1-1
TEL:03-6274-6745
※メンズアイテムがメインのショップ。

Gente di Mare グランフロント大阪店

大阪府大阪市北区大深町4-20
グランフロント大阪 南館1階
TEL:06-6372-6300
※レディースアイテムがメインのショップ。

Photos: Atsushi Kimura
Direction & Text: Misaki Yamashita